海色の世界を、君のとなりで。

「───…わたし、蛙化現象、起こしちゃうの」



 ぐらりと心が揺れるのを自覚する。鉛のように重たいものが吐き出されると同時に、今まで抑え込んでいた不安や安堵、切なさややるせなさが一気に渦を巻き、透明な雫となってこぼれ落ちた。
 友達の誰にも言ったことがなかった、可奈にすら言ったことがなかったその言葉。


 引かれたり、変だと言われるのが怖くて。

 "普通"ではないと告げられるのが嫌で。


 ネットで批判を受けているのを見たら、これは隠さなければならないことなんだって。


 自分は迷惑極まりない存在なんだって、強く強く再認識させられて。


 だから絶対に言えなかった。理解してもらえなかった。


 渦巻く暗闇の中、ひとりで抱えていくべき問題なのだと、将来が不安で仕方がなかった。



溢れる涙を懸命に拭って、星野を見つめる。



星野は表情を変えず、静かにわたしの目を見つめ返した。




トンッ、とまた背中を押される。


 大丈夫だよ。


 そう応援してくれているような気がした。




「わたしは……好きな人と、両想いになれないの。付き合うことができないの」



 ぽつり、ぽつりと。


 (たが)が外れたように、どんどん想いがあふれだす。
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