海色の世界を、君のとなりで。
鮮やかな光が彼を照らし、硝子玉のような瞳の中に、鮮烈な赤が混ざる。
「……お前」
二度目のお前呼びには、もう違和感を感じなかった。
一度目で慣れてしまったのか、それとも彼の不思議な瞳にとらわれてしまったのか。
そんなことをひとつずつ確かめている時間などないまま、彼の薄い唇が言葉を紡ぐ。
「────俺のこと好きになるよ」
止まっていた時間の歯車が、今再び動きだす音がした。
眩さに目を細める黄昏時。
これが、すべての始まりだった。