海色の世界を、君のとなりで。

これは紛れもないわたしの本心。

嫌い、と言えば嘘になるけれど、好きかと訊かれて「当然」と頷けるほどではなかった。


「なんだよそれ。ここまで続けてんのに?」

「だって、辞める理由がないから……」


せめて夢中になれる趣味の一つや二つでも見つかれば、あっさり辞めることができるような気がした。

けれど、今のわたしには趣味はおろか、興味関心を引くものすらない。


「星野は、どうなの?」


なんだか今日は、質問してばかりだ。

星野がいつもより素直に答えてくれるから、それに甘えてしまっているのかもしれない。


「俺は────」


まっすぐに前を向いて、その瞳の奥に強い光を宿したように見えた。

不思議な瞳が、より一層煌めいて魅力を増す。


けれど次の瞬間、すっとその色は消えてしまった。

あっという間に光がなくなった目を、少し切なげに細める星野。


「……お前と同じようなもんだよ」


壁が築かれたような気がした。

線を引かれたような気がした。


これ以上入ってくるな、そう言われているみたいで。


「……ごめん」


反射的に謝ったわたしを見ることないまま、星野は鞄を肩に掛け直した。
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