海色の世界を、君のとなりで。

「ごめん。ちょっと色々あっただけ」

「……色々?」


眉を寄せた可奈に、曖昧に頷く。

一瞬、彼女の顔にふっと影がかかったように見えた。


しまった。

余計なことを言ってしまった。


途端に後悔に襲われる。

今、わざわざ意味深な発言をする必要なんてなかったはずだ。

それなのに、ふと口をついてしまった言葉は簡単に取り消すことができない。


「それよりさ、可奈。今日のお昼は、中庭で食べない?」


突然の話題転換に、可奈が「え」と目を丸くする。

それでも彼女は優しいから、「うん、そうする!」とすぐに快諾してくれた。


「でも、どうして?」

「いつも教室だとつまらないじゃない?たまには景色を変えてみてもいいかもって」

「たしかに。ナイスアイデアだよ、栞ちゃん」


本当は、星野と同じ空間にいる時間を、少しでも減らしたかっただけ。

でも、そんなことは可奈に言えるはずもなく。

にこにこと笑みを浮かべている可奈を見ると心が鈍く痛むけれど、それさえも自分の中で正当化して。

「でしょ?」と無理やり口角を上げた。
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