海色の世界を、君のとなりで。
一瞬で消えてしまう夢のようなものだったのだ。
どちらにとっても。
たいして気にするようなことではない、そんなもの。
「お、星野!」
そんな声で、視線が教室の戸に引き寄せられる。
いつものように、特にセットすることない髪を無造作にかき上げながら、一直線に席に着く星野。
一瞬目があったような気がしてドキリとしたけれど、たいして反応を示さないまま着席してしまった。
ほら、やっぱり。
星野にとっても、そんなもの。
だから、わたしがいちいち気にする必要なんてない。
どうせ、夢だったのだから。
彼のことだからわざわざ話をしてこないだろうし、わたしだって記憶から消してしまいたいような出来事をいちいち掘り起こしたくもない。
普段なら少し苛立たしく感じてしまう、彼の無頓着さも。
今日ばかりは、逆にありがたかった。