海色の世界を、君のとなりで。
***

昼休み。

となりを歩く可奈と共に中庭に行く途中。


「成瀬ちゃん」


突然後ろから声をかけられた。

振り向いてその姿を認識し、反射的に頭を下げる。


「こんにちは」

「こ、こんにちはっ」


わたしに続くようにして、可奈もペコリと頭を下げた。


「そんなに丁寧にしなくていいのにー。ねえ、麗華(れいか)?」

「ほんとほんと。上下関係できちゃってるみたいじゃん」


あはは、と笑う彼女たちは、我が女子バスケ部のキャプテン麗華先輩と、副キャプテンの真波(まなみ)先輩。

ずっと頭を下げていると「顔あげて」と声が降ってきた。

ゆっくりと顔を上げる。


「昨日、部活に来なかったのはどうして?」


あくまで穏やかな口調で、その裏に鋭い棘を潜めて。

怖いほどに満面の笑みで、真波先輩が訊ねてくる。


覚悟は、していた。

どうせ言われるだろうなと。


それでもせめて部活中だと思っていた。

なのに、よりによってこんな昼休みに。


「今、どれくらい大切な時期か分かってる?」

「……はい」

「私たちはね、もうすぐ引退するの。この夏が終わったら、引退。だから負けるわけにはいかないの。それは分かってるよね?」

「……はい」

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