海色の世界を、君のとなりで。
 くだらないことを考えているうちに、ボールは綺麗な弧を描いて、ゴールに吸い込まれていった。

 ナイシュー、とベンチから声が上がった。


 そしてまた地獄のディフェンスがやってくる。


 狭いコートの中を往復するのに加えて、ボールを扱わないといけないなんて。


 走りながら、オレンジ色のゴールを見遣る。


 あの小さな籠の中に、この球を入れる。


 たったそれだけのために、血が滲むような努力と練習を積む。

 それなのに、一度も試合に出ることなく引退を迎える選手は山ほどいるのだ。


(なんて理不尽な世界なんだろう)


 自分が「そっち側」ではないことに感謝しなければならないのかもしれない。


 それでも。



 ……いったい何が楽しいんだか。



 そう思わずにはいられなかった。
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