海色の世界を、君のとなりで。
「……なかなか良かったんじゃねえの」
一瞬耳を疑った。
わたしのプレーをいつも批判してくる、あの星野が。
厳しいことしか言ってこない、星野が。
今、わたしのプレーを褒めた……?
「なんつー顔してんだ、馬鹿」
驚きを隠せずじっと見つめていると、星野がそう言って視線を逸らした。
「今の、本当?」
「……じゃあな」
「ねえ、ちょっと星野!」
振り返ることなくスタスタと去っていく星野の背中を見つめる。
身をひるがえす前の僅かな沈黙は肯定ととらえて良いのだろうか。
彼はいつだって良くも悪くも正直だ。
だって、いつもあれだけわたしのことを否定できるのだから。
そしてそれはただの悪口ではなく、わたしが力を抜いていることを見抜いた上での厳しい言葉だったりする。
だからこそ、ちゃんとわたしのプレーを見た上で、褒めてくれたのだろう。
だとすれば、さっきの言葉に偽りはないはずだ。
「おまたせ、栞ちゃんっ!……あれ、いいことあった?」
いつの間にか緩んでしまった口許を、そっと手で押さえる。
「……ううん、別に」
なんて、わたしは彼とは違って嘘つきだ。