海色の世界を、君のとなりで。
今日は一日空は薄暗く、灰色の雲が浮かんでいた。
ちょうど帰宅しようと靴を履いたときに小雨が降り出し、一気に激しいものに変わった。
よかった、と内心でほっと息を吐く。
備えあれば憂いなし。
鞄に忍ばせておいた折り畳み傘を取り出してパッと広げると、鮮やかな水縹色が目の前に広がった。
透き通る半透明の水縹はとても綺麗で、雨だというのに少しだけ気分があがる。
自然と口角が上がるのを抑えて、傘を差した。
そこでふと、となりに人の影を感じて振り向く。
「……わ、っ」
思わず声が出てしまったのは、となりに星野がいたからだ。
黙って突っ立っている星野は雨具らしきものは何も持っておらず、ただ空を見上げて逡巡しているように見えた。
もう一度空を見上げて空模様をうかがう。
当分雨は止みそうになかった。