海色の世界を、君のとなりで。

何度も自分に言い聞かせる。

けれど妙に落ち着かなくて、どこに向けたらいいか分からない視線を左右に揺らす。


となりから香るシトラスの香りと、すらりと高い背は、彼の存在を存分に主張していた。


安心感。

形容するなら、きっとこれ。


となりに星野がいる。

たったそれだけの事実にわたしはやはり弱いらしい。



「……こっち」



車の通りが多い場所に来ると、星野はわたしの腕を掴んで歩道側に引き寄せた。


その途端、トクンと甘く奏でられる心音。


特に意味はない。

それなのに、どうして。


いちいち訊くようなことではないので、ありがたい厚意として勝手に受け取っておくことにした。


それからふたりして黙々と歩き、家に到着する。
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