君の甘い笑顔に落とされたい。
椎名くんはと言えば、なんだか名残惜しそうな顔でこっちを見ていた。
「──なに、なんか企んでる?」
桃ちゃんと椎名くんがいなくなった音楽室で、久世くんがそう聞いてくる。
企んでいるって言えば、そうなんだけれど……。
ぎゅっと、カーディガンの裾を握った。
せっかく桃ちゃんが2人きりにしてくれたんだから。私も頑張らないと。
あのね、久世くん。私ね……──
「っ……」
「……」
「(き、緊張で、声がでない……!)」
連絡先を教えてほしいの。
ただ、それだけなのに。
どうしよう。今になって恥ずかしくなってきた。
久世くんと2人きりで、口をパクパクさせることしかできなくて、この沈黙がつらい……!