君の甘い笑顔に落とされたい。
無意識に視線が下がる。
ぎゅっと力が込められた自分の両手を見つめながら、なんでこんなことも出来ないのって、自分を責めた。
「どこ見てんだよ」
沈黙を破ったのは、久世くんの静かな声。
ぱちぱち、瞬きをして、久世くんの言葉の意味を理解しようとする。
ど、どこを見てるって……自分の、手、だけど……。
「俺こっち。見えてんだろ」
「は、え、」
ギシ、という音がして、久世くんが立ち上がったことが視界の端で分かった。
久世くんの上履きが近づいてくる。
ぐるぐる、私の頭は色々なことを処理しきれていない。
久世くんが近づいてくる?なんで?どうして?
わた、私はどうすれば……
なんて。そんなことを考えていたら。