君の甘い笑顔に落とされたい。
『は!?んなことねぇし!』
『おまえカラオケではマイクいらねーくらい声でけーじゃん。もっと本気だせるだろ』
小さな笑い声が聞こえてくる。
もう完全に、さっきまでの冷たい空気はなくなっていた。
久世くんが来てからのこのクラスは、なんだか暖かい雰囲気……。
『歌えるだろ。こーやって、』
ポカポカと、胸が暖かくなった瞬間、
久世くんの歌声が廊下まで聞こえてきた。
大きな声で、でも、お世辞にも上手とはいえない。
私達も、クラスの人達も、突然のことにポカンとしてしまう。
ワンフレーズ歌い終わった久世くんは、男子に向き直った。
『下手くそな俺が大声で歌えんのに、おまえ、何にビビってんの?だっせーなぁ』