君の甘い笑顔に落とされたい。

あの時は風が強かったし、それに折り畳み傘だったから仕方ないよ!

そう伝えると、画面の向こうにいる椎名くんは優しく笑った。


《やっぱ家まで送ればよかった》
「あは……大丈夫だよ、本当に。心配してくれてありがとう、椎名くん」

《どういたしまして。じゃあ柚琉にかわるね》


《はい》という椎名くんの声の数秒後、また水槽の映像が流れてきた。

きれいだなぁ……。
いつか、叶う日がくれば久世くんと2人で行きたいな、なんて。



《……"あの日"ってなんのこと》
「え?」



呟くように言われたその言葉に、私は首を傾げた。

あの日っていうのは、椎名くんと一緒に帰った大雨の日のことだけど……
椎名くん、久世くんには何も言ってないのかな?
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