君の甘い笑顔に落とされたい。
「……」
「……聞いてる?」
「っき、聞いてます、ありがとう」
そっと久世くんの手のひらに触れると、ぐいんっと上へ引っ張ってくれた。
「軽すぎてびびった……」
「そ、そういうお世辞はいいからっ」
スカートについたゴミを叩きながら、やっぱり久世くんはずるいと思う。
あんな、スマートに手を差し伸べてくれるなんて、ずるい。
……って、キュンとしてる場合じゃないでしょ、私っ。
急いで机の上に置かれた雑誌をバッグの中へとしまう。
明日桃ちゃんに返そう。うん。すぐに返そう。
久世くんの方を振り返ってみると、机の引き出しからノートを取り出しているところだった。
そっか、忘れ物しちゃったから取りに戻ってきたのかな。