君の甘い笑顔に落とされたい。

ぽつりぽつりと、あの時のことを伝えると、「……そうなんだ」って、呟くように椎名くんはそう言った。



「私の気持ちは久世くんには迷惑なものなんだって思ったら、上手く話せなくなっちゃった」


……っだめだな、私。
久世くんのあの表情を思い出すだけでまた胸が痛くなってくる。

ぎゅっと瞼を強く閉じる。
しっかりしないと……。

椎名くんにまで迷惑をかけてしまうのはちがうでしょう。



「……ごめんね、みっともないところ見せて──っ、!」



そう言いながら椎名くんから離れようとした時、今度は強く抱きしめられた。

もちろん、椎名くんに。
突然のことにただ瞬きをすることしかできない。

名前を呼ぼうと口を開きかけると、椎名くんの静かな声が教室に響いた。
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