君の甘い笑顔に落とされたい。
「あっ、久世!どこ行くんだよ!」
「自販機」
「私らも行くっ!」
教室を出て行く久世くんに、慌てて付いていく男女数人。
少し騒がしかった教室が落ち着いて、
「相変わらず楽しそうだね〜」なんてクスクス笑う声も聞こえて。
穏やかな昼休みの時間が流れる。
「……桃ちゃん、今の、見た?」
「見たよ〜。久世の人気っぷり」
飲み終えたジュースをゴミ箱に放り投げる桃ちゃん。
「ううん、そうじゃなくて……」
そうじゃなくて。
久世くんの隣の席に座る男子に視線を移した。ノートと教科書を広げて、自習をしていた男子。
そんな彼に、去り際、久世くんは耳元で何かを呟いてた。
廊下側の私の席からじゃ、何を言ったのかは聞こえなかったけど。
久世くんが教室を出たあと、その男子の表情が柔らかくなっていたから。