君の甘い笑顔に落とされたい。
瞬間、中学の時のことが頭をよぎった。
あの時の笑い声と、冷めた視線。
忘れることはない、苦い記憶。
「……たぶん、中学の頃のことを引きずってるんだと思う」
気になってる人がいたの。
久世くんじゃない別の人。
久世くんと同じように人気者で、特に女子のファンが多くて。
1年の時に隣の席になって、よく話すようになった人。
好きっていう気持ちはその時はよく分からなかったけど、ただ漠然と"いいな"って思ってたの。
「それで、ある日の放課後にクラスの女子で集まって皆の好きな人の話になって──」
『花戸さんは好きな人とかいるの?』
『えっと……』
好きな人ではなかったけど、
気になってる人ではあったから。
だから、その人の名前を出したの。