君の甘い笑顔に落とされたい。


だから、息を大きく吸ったの。



「久世くんのことなんか、好きじゃないよっ」



その瞬間、桃ちゃんが「あっ」と。
しまった、というような顔をした。


「……桃ちゃん?」


その視線の先は私の後ろで。
不思議に思って、ゆっくりと振り返ってみる。



「……」
「……」



っく、くく、


「(久世くん……っ!!!?)」


驚きすぎて、声が出ない。
心臓バックバク。

2年生になってからはじめて目が合った。
長い睫毛。気怠そうだけど綺麗な瞳。

正真正銘、"あの"久世くんが、私のことをみ、見てる……っ。


自販機に行った帰りなのか、片手に水のペットボトルを持っていて。
もちろん後ろにはいつも久世くんを囲っている男女数人もいて。
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