君の甘い笑顔に落とされたい。
▽君の隣にいたい。
4階の第一音楽室。
譜面台に使われていない机に、黒いソファ。
「──あの、久世くん」
「なに」
「その、手、もう離してもらえると……」
腕を掴まれたままの私の言葉に、隣に座る久世くんは「引っ張ってった言ったのは花戸さんなのに。離していいの?」なんて、訳の分からないことを言う。
離していいに決まってるよ。
だって、久世くんに触れられると、心臓が痛いくらいにドキドキするんだもん。
このままじゃ保たないんだよ……
「離してほしい、です」
「まだこのままでいてほしい、じゃなくて?」
「なっ、そんなこと思ってないよ……っ」
ほっぺたがあっつい。
カーディガン越しに掴まれている右腕もあつい。
久世くんは私の反応に小さく吹き出してから、パッと手を離してくれた。
「冗談だろ。一々本気にすんなよ」