君の甘い笑顔に落とされたい。


『──ねぇねぇ、良いこと聞いちゃった!
久世くんってロングよりボブ派らしいよっ!』


……高校に入学してから、久世くんがロングよりもボブが好きって噂を聞いたから、
くせ毛の髪が広がってしまうとしても、お手入れが大変だとしても。



「うん……切っちゃった。」



少しでも、久世くんの好みに近づきたくて、思い切って短くしたの。

おかしいよね。
久世くんの彼女になりたいとか、そんなこと本気で思っていたわけじゃないのに。

ていうか、無理なのに。私が彼女として久世くんの隣に立つだなんて。



「(無理だって、分かってたけど……)」



──髪を切ったの。
久世くんに、好かれたくて。

……見ているだけで十分、なんて思っていたくせに。
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