媚薬を盛って一夜限りのつもりだったので、溺愛しないでください!
「もう取り掛かっていただけるんですか?」
翌朝、バルドに『解呪したい』と言い出したところ、驚かれてしまった。
昨日のレオの態度といい、体調不良でフラフラだったフローラの様子といい、断られるかもしれないと思っていたようだ。
「すぐに取り掛かった方が良いと思います」
「それは、命に関わる、ということでしょうか?」
バルドの問いに、フローラは頷く。バルドは、ショックだったようで青ざめていく。
「殿下には強い呪術が施されています」
「……どんな?」
「心を病む呪いです。呪いが進行して、完全に心を蝕めば、不眠になり活力が失われ、廃人のようになるでしょう。儚くなる可能性もあります」
「っ!!」
遠目で診ただけなので正確ではないか、強いものであることは確かだった。バルドの顔が強張る。バルドによると、最近特に夢見が悪いようで、毎夜うなされ、眠れていない様子なのだそうだ。あまり時間がないかもしれない。
「それで、一度だけ、殿下の寝所に行きたいんです」
「……襲う気ですか?」
「ち、違います!」
バルドに疑われて、フローラは慌てて否定した。
(実は先日、もう襲いました!)
とは言えず、フローラは解呪方法の説明をする。フローラの得意分野が活かされる機会など今までになく、少し自信は無いが方法はこれしかないはずだ。
「私は一応、解呪魔法を専門としています。解呪には手を握る必要があるんです。でも、起きている間は私に触れられたらご不快でしょうから、寝ている間にと思ったのです」
「いや、そんなことは……」
「分かっています。殿下に嫌われているのは。でも解呪専門の魔女として、放っておけないんです」
バルドは難しい顔で、一旦検討させてください、と言って立ち去っていった。
フローラが解呪魔法を身につけたのは、幼い頃のこと。祖母に習った。
他にも浮遊魔法に結界魔法、占術なども習ったが、攻撃魔法は一切教えてくれなかった。
解呪魔法は得意になったが、祖母のように呪術も得意なわけではなく、祖母が亡くなってからは練習する機会が全くなかった。
だから、一人で解呪魔法を使うのは、実はこれが初めてだ。
解呪は難しいとされる魔法の一つで、間違えれば自分自身に呪いが降ってくる。
妊婦である今、お腹の子どもだけは守らなくてはならない。
(やれる……やるしか、ない。おばあちゃん、見てて!)