悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
 途端に沙羅が、ピタリと口をつぐんだ。びっくりした拍子に涙の勢いが少し減った瞳を、今にもこぼれ落ちそうに見開く。
 理樹は構わず、彼女に手を差し出したままこう続けた。

「勝負内容には『手を借りるな』というルールはなかった」
「…………ルール……?」
「つまり俺が手を出しても、お前は反則負けにはならない」

 まるで悪党みたいな発想だ。

 そう思いながら、理樹は仏頂面を後方に向けて「反則じゃないよな」と、風紀委員長である西園寺含む見物人一同を見やった。全く悪びれもないいつもの顰め面で、堂々と「どうだ、お前らはこれが反則だと思うか」と意見を求める。

 一瞬、生徒たちが迷うように互いの顔を見合わせた。
 そんな中、きょとんとした顔をした数秒後に「はい!」と、場違いなほど活き活きとした笑顔で、陽気な声を上げる少年がいた。

「全然反則じゃないと思うぜ! 俺、生徒会長と沙羅ちゃんが話し合ってる時、その場に居てやりとりはしっかり聞いてた」
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