悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
「――で、寝込みでも襲おうとしたのか?」
「ちちちち違うよ!? 別にぎゅっとするタイミングを計っていたわけじゃなくてッ」

 じわじわと恥ずかしさが蘇ったのか、慌てる沙羅の顔が火照っていった。

 ずっと失敗に終わっているというのに、相変わらず『ぎゅっとします!』という目標は続いているらしい。発端は拓斗の部活結成であり、彼女が唐突にそんなことを口にしたのが始まりだったが、一体何がそう思い立たせたのかは不明だ。

「お前、そんなに抱擁したいのか?」

 尋ねてみると、沙羅がじんわりと頬を染めて「それは、その」と言葉を濁しした。
 恥ずかしがりつつも普段から突撃してきているというのに、しかも寝ているところに何かしようとでもしていた直後だというのに、ここで羞恥に言葉を詰まらせるというのも、変な少女である。

 達成してくれれば、少しは放っておいてくれるのだろうか。

 どうしてかそれも悪くない気がした。理樹は、顰め面のまま「ん」と言って手を広げてみせた。彼女が不思議そうにこちら見てくるので、声をかけた。
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