悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
四章 沙羅という名の少女、理樹という名の少年
 どうしてか分からないけれど、とても幸せで、そして少しだけ苦しい夢を見た気がする。

 お姫様みたいなドレスを着た女の子が、堂々と歩く一回り年上の男の人を、遠くから見ている風景があった。
 彼は社交の場であまり見掛けることがない人で、いつも少しもしないうちにパーティー会場からいなくなってしまう男性、というような設定だったような……
 

 でも、よくは覚えていない。
 ただの夢は、目覚めると頭の中にほとんど残らないものだから。


 目が覚めたら、どうしてか涙が頬を伝っていることに気付いた。

 沙羅は不思議に思って涙を拭ったところで、ベッドのサイドテーブルにある置き時計を見てハッとした。中学時代からの親友レイと、今日は早い時間に待ち合わせしている。それなのに、

「きゃあああああああ!? 目覚ましをかけ忘れてたッ、今日は正門より前で待っていようと思っていたのに!」

 ふと、昨夜も散々思い返した、昨日抱き締められた一件がまたしても脳裏に蘇り、沙羅はぴたりと口をつぐんだ。あの時は唐突でびっくりしてしまって、動けず声も出なくなってしまったのだ。
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