悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
 理樹は、高校入学時からずっと考えているそれを思い返した。結局のところ、分からないものは『分からない』という、いつもの結論にループし、悩ましげに吐息をこぼして思考をやめた。

「お、恋の溜息か? 一生に一度の一目惚れ、人はそれを『純愛』と呼ぶ」
「したり顔で何言ってんだ。走り幅跳びの砂場に埋めるぞ」

 冷房が効いたこじんまりとした部室で、理樹は弁当を食べたあとに漫画を読んでいた拓斗を見もせずに、若干マジでやってやろうかなという程度の殺意を込めて、間髪入れずそう言った。

 今は昼休みである。『読書兼相談部』が立ち上がってからというもの、この昼食風景はすっかり馴染んだものとなっていた。


 今日も沙羅は「ぎゅっとします!」の突撃作戦を決行してきた。朝は待ち伏せする時間がなかったのか、昼休みになって弁当を買いに行こうと廊下を歩いていたところで、自動販売機の横から飛び出してきたのだ。

 つまりそれは、つい数十分前のことである。
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