悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
 そう言った拓斗は、ふと「言葉だけ並べると、ホントなんであの子が理樹に惚れたのか分かんなくなってきたな」と悩ましげに眉を寄せた。

 テーブルの上の適当な位置に鞄を置いたところで、理樹はそれを見下ろしながら、こう呟いた。

「…………生まれ代わりって、信じるか?」

 小さな声でそう口にしたら、後ろにいる拓斗が「はぁ?」と声を上げた。

 理樹は構わず、独り言のように、なんとなくそれを口にした。

「……ひでぇ男がいたんだ。奴は成り上がりの貴族で、婚約破棄されると噂されていた伯爵令嬢に近づいて、破棄されるなんて知りもしなかったと彼女を慰めた。そうして結婚を申し込んでお飾りの妻にしようとして、惚れて……女は最後の最後に静かに泣いて『どうして出会ってしまったんだろう』って言って、泣いたまま死んでいったんだ」

 最期の言葉は、途切れ途切れだった。けれど、自分が結婚後に彼女に抱いた『結婚までの理由と行動』への罪悪感から、彼女が言わんとする言葉がそれであるような気がした。
 他に、どんな文章があるのかは浮かばなかったからだ。
< 208 / 237 >

この作品をシェア

pagetop