悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
 とりあえず俺から言うことがあるとすれば、と拓斗は口にして無理やり話を戻した。

「そうなら、余計にこのままじゃダメだと思う」

 そう続けて、彼は理樹の横顔を覗きこんだ。

「彼女と一度、正面から向かい合えよ。前世の話を打ち明けろとまでは言わないけどさ、昔は昔だろ。今のお前がどうしたいのか考えて、彼女と会うべきなんじゃねぇの?」
「…………」
「……まぁ、そう簡単に判断出来るような問題じゃないのは分かってるけどさ」

 再び黙りこんだ理樹を見て、拓斗は視線を時計へと向けた。現在の時刻を確認して、少し思案した後に親友へと目を戻す。

「沙羅ちゃん、お前に『一目惚れした』って言ってただろ。魂がそのままおんなじって言うんならさ、前世の『サラさん』も、お前のことが心底好きだったんじゃないか?」

 解釈の違いがあるのではないのか、と拓斗が遠回しに尋ねてくる。

 理樹は、どうだっただろうか、と前世で彼女を失った頃に覚えていた喪失感で上手く動いてくれないままの頭を働かせた。
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