悪党みてぇな貴族だった俺、転生した現代で小動物系美少女をふる
 理樹は、正面に顔を固定したままこう言った。

「おい。俺は告白を断ったはずだが」
「好きです」
「お前、俺の話聞いてねぇな?」

 その時、廊下を勢いよく駆けてくる足音と共に、男子制服に身を包んだ女子風紀部員――沙羅と同じ一組の青崎レイが教室に飛び込んできた。

「九条理樹! 沙羅ちゃんから離れろこの変態め!」
「――いちおう説明しておくが、これは彼女が田中の椅子を引っ張って、勝手に隣に座っているだけだ」

 見てみろよ田中が可哀そうだろ、と理樹は目も向けずに淡々と言った。

 クラスメイトである田中は、沙羅に「借りてもいい?」と聞かれて「是非どうぞ!」と答えてから、ずっと座っていなかった。立ったままこちらをチラチラと見て、他のクラスメイトたちと同様に「ああああなんって可愛いんだ」と悶えている状況である。

 目の前の席の拓斗が「ストレートに告白されてんなぁ」と笑う顔を見て、理樹は椅子の下から蹴りを入れた。
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