君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
ほんの一瞬だけ触れて、踵を床につけて奏を見上げる。
「ん。これで我慢するわ」
さっき触れたばかりの唇は綺麗に弧を描いた。
「あ、そうだ鈴。さっき美希に告白されたけど、ちゃんと断ったから。なにも心配すんなよ」
「あ、あー・・・そっか」
「ん。じゃあ、もう戻らないとだよな?ステージ楽しみにしてるから、頑張れよ」
「うん。ありがとう」
そう返事した私の顔を見て、奏は武道場を出て行った。
そっか。奏、ちゃんと断ったんだ。
ふっと肩の力が抜ける。
さっきの奏の言葉と態度で、まだほんの少し残っていた不安が払拭された。
よし。ステージ、楽しもっ。
ドレスの裾を持ち上げ、足取り軽くみんなのところへ戻った。