君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
コンクールまで、1週間を切った。
その日の夕方、思いもよらない人が家を訪ねてきた。
お母さんに呼ばれて玄関へ行くと、そこにはキャリーケースを持った優さんが立っていた。
その姿を見て、ハッと息を呑んだ。
久しぶりに奏の面影を感じる人に会って、心臓がドクッと大きな音を立てた。
「優さん・・・」
久しぶりに見た優さんは、少しやつれているように見えた。
ひとり、なのかな。
もしかして奏もいたり・・・
そんなことを考えていたら、優さんが口を開いた。
「鈴ちゃん・・・久しぶり。・・・色々と、心配かけてごめんなさいね・・・。私ひとりなんだけど、・・・引っ越しの挨拶に来たの」
眉を下げて申し訳なさそうにそう言った。