君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
気づかないフリ
少し前まで薄いピンクだった木々は、深い緑に染まっている。
大学生活にもようやく慣れてきて、今日も授業に個人練習・アンサンブルと怒涛の一日を過ごし、一人暮らしを始めたマンションに帰ろうと帰路につくところだった。
「華山さん、俺と付き合ってくれない?」
指揮専攻の先輩に呼び止められ、帰路につく学生の流れから少し外れたところに連れてこられて、今、告白されました。
「えっと・・・すいません、先輩とは付き合えません」
申し訳ないですが、オーケストラで何度か見かけたことがあるくらいで、先輩のことはほとんど知りませんし、私には、好きな人がいますから。
心の中でも丁重にお断りした。
「えー硬いなぁ、そんなこと言わずに軽い気持ちでどう?俺、結構モテるよ?」
えっ。
思わず顔が強張る。
チャラい・・・。
「すいません、好きな人がいるので」
これで引いてくれますように。
そんな思いを込めて下を向いた。
「いいじゃん、付き合ってないんでしょ?」
う、そう言われると・・・
たぶん、両想いではあるけど、1回別れてる状態だし、まだ付き合ってはない・・・か。
んーどうしよ・・・
この先輩は結構しぶとそうだし、なんて言ったら引いてくれるかな・・・。
次に出す言葉に迷っていた時だった、
「すいません。この子、俺のなんで。もういいですか?」