君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜

君への想い、この音にのせて。



6月も下旬になり、梅雨が過ぎ去って、昼間の日差しは夏本番へ向けて日に日に力を増していた。


そんな中、冷房の効いた室内で、私はひたすら楽譜と向き合っていた。


7月7日の七夕の日に開催される、七夕コンサートがもう目前に迫っているからだ。


このコンサートは大学主催で規模が大きく、市民文化会館のコンサートホールには毎年多くの観客が入るらしい。


今回はフルートソロ演奏にも抜擢されたため、絶対に成功させたいと毎日練習に励んできた。


あれから、十也くんとは前みたいに普通に接していて、良好な友達関係が築けていると思う。

逆に奏とはあまり連絡はとれずにいたが、それすらも悩む暇はないくらい練習に集中していた。


私はどうやら、集中するとあまり周りが見えなくなるらしい。そして、それが終わるとやっと緊張の糸が切れる。


1年と数ヶ月前もそんなことがあったなと懐かしく感じていた。


自宅マンションに戻り、コップ一杯の水を飲んで一息つく。


両親が用意してくれた、築浅3階建マンションの1LDKの部屋は、一人暮らしには充分すぎるくらいに広くて、TVをつけないと静かで少し寂しい。


ソファに座ってボーッとTVを観ていた。
< 246 / 268 >

この作品をシェア

pagetop