君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
ブーッブーッ
ローテーブルに置いていたスマホが震える。
「もしもし?」
「鈴、久しぶりね、元気?」
落ち着いたトーンの優しいお母さんの声だった。
「うん、元気だよ。お母さんは?」
「もちろん、元気よ。それよりもうすぐね、コンサート。お母さん楽しみで、もうソワソワしちゃって」
「めずらしいね。お母さんが私が出る舞台でソワソワするなんて」
「あー・・・そう?お母さんだって、そりゃいつも楽しみにしてるわよ。大事な娘の舞台なんだから。当日の衣装はバッチリ準備できてるからね!それと、お父さんが終わった後に着るワンピースと靴も買ってくれたわよ」
「ええ!そんなっ、終わったあとの服と靴まで!?衣装は、確かにお母さんの方が舞台慣れしているから頼んだけど・・・そんな一世一代の大舞台ってわけでもないのに」
「何言ってるの、その日はとっても大事な日よ。間違いなく。だからお母さんに任せてちょうだい。成人前の娘にできることなんて、もう限られてるんだから」
この日の電話でのお母さんは、やけに張り切っている気がしたけど、そのあとは、普通にお互いの近況報告をして電話を切った。