君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
キャリーケースを引きながらエントランスホールへ向かう。
広いエントランスホールには、横に大きく広がる大階段があり、その下の広場には、数人でかたまって話している学生やその家族と思われる人々、そしてそれぞれ帰って行く学生たちが見てとれた。
見晴らしのいい階段の上から、両親を探す。
あ、いた。
でも、あれ・・・?
お父さんお母さんと向かい合って話している男女がいるけれど、背中を向けているし、少し距離があるからこっちからはわからない。
誰だろう。
男性は花束を抱えているのがわかる。
少し歩みを進めて目を凝らすと、身に覚えのある、でも少し大きくなった後ろ姿に、ドキンっと胸が鳴った。
え・・・
お母さんが私たちに気づき、手を振る。
それと同時に、花束を持った男性もゆっくりとこちらを振り返った。
その顔を見て、足が動かなくなる。
1年と半年ぶりに見たその顔は、記憶の中のよりも少し大人な雰囲気を纏って、相変わらず整った顔をしていた。