君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
「鈴、ただいま」
その言葉を聞いて、目の淵に溜まっていた涙が溢れた。
口元を覆っている両手が少し震える。
「・・・奏っ・・・・・・っ、・・・おかえりっ」
そう返した私を見て、奏は嬉しそうに破顔した。
「・・・帰ってくること、黙っててごめんな。・・・驚かせたくてさ、母さん通して、結帆さんに協力してもらったんだ」
ああ、だからお母さんもお父さんも・・・
「・・・いつ、帰って来たの?」
「昨日の夜。今日の鈴の演奏、生で聴きたかったし、観たかったからさ。・・・すげーカッコよかったよ。めちゃくちゃ綺麗だった。・・・俺のために吹いてくれてんじゃねーかって錯覚しそうだったよ」
照れ笑いを浮かべてそう言った。
「・・・錯覚じゃなくて、本当に奏のこと想って吹いたの。いつも演奏するときは、そうしてたんだよ」
それを聞いた奏は目を見開いて、驚いている。
「マジか・・・すげー嬉しい」
左手に花束を抱えたまま、右手で口元を覆って私を見つめる熱い瞳。
「鈴・・・俺の気持ち、聞いてくれる?」
そう言って奏は、花束に両手を添えると姿勢を正した。
「うん」
私も涙を拭いて、ちゃんと奏の顔を見た。