君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
「ありがとう、お母さん」
そう言ったのを確認したかのように、
「じゃあ、行くか」
奏が私の手を取って出口へ向かって歩き出した。
「お母さんたち、またねっ」
慌てて手を振って、奏の方へ向き直る。
「じゃあね〜」
「いってらっしゃ〜い」
送り出してくれた言葉を背中に受けて、少し早歩きな奏について行く。
「奏っ、早いねっ、そんなに早く歩いて足は大丈夫?」
「ん。大丈夫大丈夫」
「どこに行くの?」
「ふたりきりになれるとこ」
ニイッと悔しいくらいカッコいい笑顔を見せて、少し歩くペースを落としてくれた奏。
しっかりと絡んだ指、そこから伝わるあたたかさが、奏が今ここにいることを証明してくれていた。
今、こうやって、手を繋いで並んで歩いている。
たったそれだけのことが、とてつもなく幸せで。
この幸せが当たり前じゃないと気づけたからこそ、今までの当たり前に感謝の気持ちが生まれて、これからの日々をもっと大切に過ごしていきたい、そう心から思えた。
繋がれた手とは反対に、左腕に抱えているひまわりの花束を見て、また顔が綻ぶ。
私は、ひまわりの花言葉を知っている。
「ねぇ、奏。どうしてひまわりを選んだの?」
「んー?あー・・・、秘密」
適当に季節の花だからって言ったらいいのに。
隠すのが下手過ぎて、口元が緩む。
「ねぇ、奏、ひまわりの花言葉、教えてあげようか?・・・ひまわりの花言葉はね、ーーー」
「「あなただけを見つめる」」
二人の笑い声が響いた。