君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
エピローグ
奏side.
トントントン
リズムよく食材を刻む音が、耳に心地良い。
今キッチンで鈴が夕食を作ってくれている。
すぐ横で作るところを見ていたら、緊張するからと俺はソファに座っているように言われ、仕方なく言われた通り大人しくしていた。
『ふたりきりになれるところ』として選んだのは、一人暮らししている鈴の家だった。
キッチンを見れば、鈴がいる。
画面越しでもない、名前を呼べばこっちを見てくれる、本物の鈴。
同じ空間にいる、ただそれだけで、俺は今どうしようもなく浮かれている。
鈴の家に着いてからは、ふたりでソファに座ってしばらく話をしていた。
お互いに離れていた間のこと。
俺は、事故で助けたケビンの親が歩けるように手術できるところを見つけてくれたこと、それから、鈴に早く会いたくてドクターも驚く程のスピードで回復し、元のように歩けるようになったこと。でもバスケは、まだ軽くできる程度だということを話した。
鈴は、たまに相槌を打ちながら静かに聞いてくれていた。
でも、このあと鈴の話を聴く俺の心は、穏やかじゃなかった。