君への想い、この音にのせて〜こじらせ幼なじみの恋の行方は〜
「ふっ、かわいすぎ・・・」
その瞬間、唇に柔らかいものが触れた。
びっくりして、涙が止まる。
一度離れたと思ったそれは、また何度も、何度も私の唇に降ってきた。
降ってくる度に感じるぬくもり。
それと同じだけ顔の温度もじわじわと上がっていく。
この時間が、ただただ甘くて、胸の奥がキューッとなった。
「やべぇ、止まんね」
そう言って奏は私を抱き締めた。
ドクン、ドクン
私の心臓は優しく、でも大きく幸せのリズムを刻んでいる。
まさか、奏と付き合えるなんて少し前の私はこれっぽっちも思っていなかったのに、こんな結末が待っていたなんて。
いや、結末じゃなくて、これから私たちは始まるんだ・・・。
まだ頭も心もふわふわとしていて現実味を帯びていない。
でもこの包まれている温かさは確かに現実だよね。
そんなことを思いながら、奏の腕の中で幸せを噛み締めていた。
「・・・そろそろ、行くか」
「うん」
どれくらい時間が経ったのか、さっきまで夕日に照らされていた辺りは、すっかり暗くなっていた。
真っ赤になっているであろう顔が、奏にバレなくてよかったと、ほっと胸を撫で下ろしたのだった。