漆黒に秘めた想い
「…何のこと…？」

　震えながら少女が尋ねると、その誰かは押し黙ってしまった。

　闇に染まれば、『人』ではなくなるであろうことは容易に想像できる。

　自分が人間ではなくなったら、いったい“自分”はどうなるのだろう。
　想像も出来ない恐怖で、自然に体は再び震え始める。

「…分からないわ…わたし、何も分からない…」

　怯えた少女は何も考えられず、いま自分の体を預けている柔らかな場所に体を縮こませる。

　“彼”は自分から離れたのかもしれない。
　冷たく感じていた自分を包む周りの空気が、するりと自分から離れた気がしたからだった。

「…ごめんなさい…」

　少女は思わずそう謝罪の言葉を口にする。

　まだそばにいるのかも分からない、先ほどの声の主。

「…ねえ…わたし、あなたに染まったら、あなたを好きになれる…？あなたを、ずっと好きでいられる…？」

　少女は、自分の中にできた疑問を素直に口にした。

　しかし“彼”は答えない。

「…やみに染まったら、わたしはどうなってしまうの…？あなたを好きになれた“わたし”は、いなくなってしまう…？」
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