漆黒に秘めた想い
 少女は幼い頃を覚えていない。

 姿はなくとも自分と同じように、『好き』である想いを持ったままの自分でいたいと彼は言った。

「…あなたをもう、怖がらない。あなたを好きになれるようにするわ。だから…」

 突然、少女は感じていた温かさがゆっくりと離れていくのを感じた。

『…君の、望む通りに…。君が消えてしまうくらいなら“僕”は君を、自分のものには出来ない…』

 その呟きとともに小さな光が一瞬だけ見えると、少女は再び闇に掻き消えた。


………

 夜道をひとり歩いていた少女は気付き、止めた足で恐る恐る後ろを振り返る。

「…だれか、いるの…??」

 少女は怯えている。しかし、ふと顔を上げた。

「…なんだか、こわくない…。不思議ね、だれかに優しく包まれている気がするからかもしれないわ…」

 少女はまた小さな灯りを手に、家へ向かってゆっくりと歩き出す。


 闇に包まれた、少女の身に起きたほんの短い時間の出来事。
 少女は何も覚えていなかった。

 それでも少女は恐れていた闇に、小さな安らぎを見出した。
 そして…

『…闇は怖くないよ…だから、君を好きでいさせて…』

 少女にはもう聞こえないその声。
 しかしその想いは、少女の心に変化を与えて…
< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

きらめきテレスコープ

総文字数/8,372

青春・友情17ページ

表紙を見る
君がくれた幸せ

総文字数/7,967

恋愛(その他)13ページ

表紙を見る
テッシーくんのおやつ日記 & おやつ旅日記

総文字数/4,499

ファンタジー5ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop