一度倒れたら、溺愛がとまりません!!
そんなことを考えて、いろんな情報をインプットしていると、

「ハッ、ハッ…おかあさん、おかあさん
はやく、はや、くこっちに、き、て
ひかれ、ちゃう。はやく!手を、てを」

南が呼吸を浅くしながら、手を伸ばしている。きっとお母さんの事故を夢で見て
手を伸ばして助けようとしている。
俺はその手をぎゅっと握った。

「大丈夫…大丈夫。南のお母さんはいつも南の心のなかにいるから。大丈夫だ」
南にそう言っていると…

「…ハッ、ハッ…」
南が目を覚ました。

「ゆめ…?ゆめか…晴、はる、はる
また、ま、たお母さん助けられなかった。
どんだけ、手を、伸ばしても、おかあさんは、うすくなって、き、えてく」
俺は夢の内容を聞いた時、そんなに南は追い込まれている。と改めて実感した。
少しやつれてる顔が…涙を我慢している。

南を腕の中におさめた。
「悔しいな。悔しいな。手が届かないんだもんな。苦しいな。寂しいな。南、
泣いていいんだよ。我慢は一番辛いよ」
そう言うと南の目からは涙が流れた。

「わたし、わたし、泣いたら、全てが無くなるんじゃないか、泣いたら明日から何もできなくなるって思って、泣けなかった。
お父さんの前でも…」

南は、お母さんが亡くなったときから
子供でいられなくなったんだと思った。
関係性では、父親と子供となるけど
お母さんが亡くなったことで、南は自立してお父さんを支えることが必須になってしまった。

だから…南は泣けなくなった。
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