NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その5


”椎名彰利か…。確かに武次郎の言うとおりだ。こんなベストパートナー、他にいやしなかった。コイツの代わり、どんな野郎も無理だ。…今目の前にいるコイツが九州からここ横浜へ引っ越してこなきゃ、大打ブラザースのリトルブラックはあり得なかった。間違いなく…”


”小学校の半ばで、九州の片田舎からこのハマに越してきてオレは、周り全部を敵とみなした。ここの奴ら…、自分たちの住んでる街を東京以上の都会だと思い込んで、はるか南の大田舎から転校してきたオレを、まるで山奥で生まれ育った原住民扱いだったぜ。よって、奴らには嫌悪感と敵愾心で向き合った。こっちに来てしばらくは、まさに一人ぼっちだったわ。そんなオレの前に現れたのが、大打武次郎だった訳だ…”


...


「兄貴…、コイツが九州熊本からの転校生だよ。椎名彰利ってんだ。今日も6年の威張りくさった野郎に一人で立ち向かってたんで、加勢してやったわ(薄笑)」


”武次郎は太っていて体型も大柄なので、人にはおおざっぱな印象を与えるだろうが、実に繊細でオレほどではなくとも、ドライな冷淡さと計算高さを持ち合わせていたさ。その武次郎が、手放しで絶賛した男…。それが椎名彰利だった…”


...


「そうか…。兄貴も彰利を気に入ってくれたんだな?」

「…武次郎、アイツとは組める。そういうことだ。確か父親は畳職人で、母親はピアノが弾けて近所のお嬢ちゃんに”教えてる”そうだな。それで一人っ子か…。家庭環境もいいわ。使えるぞ、ヤツは。オレも今からしっかりお近づきになっておこう…」


”そして俺達3人は、実にバランスの取れたチームワークと意思疎通のもと、リトルブラックの原型を模索し始めた…”


...


”何しろ3人からだったな。オレと武次郎だけでは所詮、周囲を蹴散らすだけで終わっていた。だが、武次郎の兄、ノボルさんが加わることで、ローティーンのオレ達は、当時いっぱしのモブスターズだった。痛快だった…”

椎名は正面の大打のおカブを奪うかのような細い目で、モブスターズ・ボス、ノボルヘ、幾多の思いを馳せた眼光を送っていた…。





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