NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その7


鶴見市郊外街道沿いのドライブインでは、大打ノボルと椎名彰利の綿密な”打ち合わせ”が続く中、何とも腰の入った目での語り合いが相槌代わりの役目を果たしていた

それはどこかリズミカルに…

”椎名はいわば、家族ぐるみでオレたち宿無しのイカレた兄弟に、それこそ愛の手を差し伸べ続けてくれたんだ…”

この時の二人による目での語らい…、そう…、それは、あの寒い夜のことであった

椎名彰利とその母は、家長の父親にその熱意の一念を以って、”説得”を果たしたのだった…

...


”今思い返しても、あの時ほどオヤジに粘り強く詰め寄ったことはなかったな。まるでオレは何かに取り憑かれたかのように、おやじを必死に説得していた。おふくろと共にな…”

「うーん…、そういうこっちゃなら、”離れ”をな。死んだばあさんの遺品やらがそのまんまじゃどん、それでええんなら、迎えちゃる。けんど、支度金はいかんぞ。何分子供だ。小遣いなら別だが」

「おとうさん、彼らはいずれ、恩を形のあるもんで返したいと心に誓っとるんだ。支度金でないと意味ない。頼むわ、武次郎たちに自立の軍資金、用立ててくれや」

「あんた…、武次郎ちゃん以外だったら私も余分な口は挟まんよ。でもさ、彰利の頼み、聞いてやっておくれよ。あの子がうちの一人息子にどんだけよくしてくれたか…。あんたもよう知っとるでしょう」

「まあ、ここは九州じゃなかとだしな。よそモンのコイツがどんだけ肩身を狭くしとったかはよう知っちょる。それを地元の者に良くされりゃあよう、できる限りはやったりたい。…じゃが、俺も何かと出るもんが多くてな。まあ、自由に使えるヘソクリはタンスの引き出しん中に入っとる分しかないわい。確か18万くらいだったか…」

「なら、私もヘソクリ7万だけしかないが、彰利、それ、武次郎ちゃんにね…」

”オレは柄にもなく、大げさに両親へお礼を言って、その晩、二人の肩を叩いてやったよ(苦笑)”

リトルブラックのその第一歩は、まさにわずかながらでも”軍資金”と言う大きな武器を持っての出立だった…。

...


あの日、おれは椎名の同郷のマブダチ、三貫野の待つ熊本へと愛車スカいラインで一路西に向けて出立した…

その後即、東西高域組織の枝同士のヤラセケンカに1枚の絵を添えて、ガキのオレ達はその渦中へ突っ込んだ

そして、なんと路の途横浜の権野組の親格、関東屈指の直系東龍会の目に止まり、坂内会長が対相和会のかじ取り役として東西代理戦争終結の当事者としてやってきた際、オレと会談を申し出てくれた

そこで、互いの将来に向けた、全く新しいパートナーシップを締結してくれることになる

以後…、オレは、そのパートナーシップの骨格となる”NGなきオーダーう”クリアの為のヒットマン発掘に、全国を駆け巡り、同時にハマのモブスターズともども、中長期の土台固めに邁進した

本当に長かった…

焦りとその情念に駆られ滾り…

やっと目の前なんだ!

オレの情念を爆発させるフィールドは

そこには、オレの生涯求めてきた相手が待ってる

もうすぐさ…


...


NGなき、屈折のイカレガイ、大打ノボルはすでにタガが外れていたのだろうか…。

かくしてこの年の夏、猛る女の聖地では、群雄割拠のラストレジェンドが勃発する
そして季節をまたぎ、その水面下と表舞台双方で、ノボルは自らが率いる大打グループのワクを逸脱したスタンスでまで、本郷麻衣との究極の対峙にのめり込んでゆく…。




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