NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
その8


鉄の連携を誇り、この8年近く、常に絶妙の呼吸を以ってチーム大打のロードを共に邁進してきた、”ネオ・モブスターズ”の4人…。

最初に、そのリーダーである大打ノボルへの”惧れ”という名の影を宿したのは、他ならぬタカハシこと三貫野ミチロウであった。

彼は、ノボルのその根底を成す徹底したドライ・メンタルが、相馬豹一逝去を迎え、俄然アクションモードに突入したこの局面で、ノボルの内面に微妙な”変調”をもたらしたことを早々に感じ取っていた。

それはごくわずかながらであっても、タカハシにとって拭い去ることのできない、大打グループを牽引するノボルへの懸念として捉えずにはおけずにいたのだ。


...


「…なあ、椎名。ノボルさん、ちょっと本郷麻衣にこだわりすぎてないか?」

「ああ、確かにそういう面は否定できないかもな…」

「ノボルさんには、お前からうまく話せないかな…。今のままじゃあ、”肝心な局面”で判断を誤りそうな気がするんだ。あの人は常に、自分へもドライに徹することができる能力を有してるはずだ。それが最近では、本郷麻衣”個人”に、のめり込んでいるような気がしてならない」

「でもよう…、実際、本郷にはみんな目が行ってるだろう。今日のミーティングだって、4人全員の話の中心は本郷だったぜ。オレ達のリーダーであるノボルさんがだ、この時局では一番の要注意人物だって捉えるの、そりゃあ自然だと思うがな」

「そう言われりゃあ、ああ、そうだなってなるわ。だが、ジャッカル・ワンに行った時も、本郷との対峙にばかり頭が行ってるようで…。あの店をやくざまがいな手口で客を引っ張ると言うが、そんなマネしたら反って足元掬われるぜ、椎名…」

「うーん…。今度預かる店は相和会の庭ん中だし…、あんまりハデに打って出るのは避けたいが…」

ここでの椎名の反応をタカハシはここぞとばかり捕らえた。

「そういうことさ!こっちのやってることはさ、相和会からしたら文句なく縄張り荒らしなんだぜ。いくら我々が”覆面”かぶってると言ってもさ。なら…、静かに水面下だろう、どう考えても…。なのに、ノボルさんは頭ではそれをわかっていながらなんだ。本郷麻衣と激しくやり合いたいって気持ちが優先してる。この事はとりもなおさず、”ビジネス”から目が逸れてる懸念ってことになるだろうが、椎名…」

椎名は屋や顔を赤らめ、しばし、同郷の盟友をじっと見つめていた…。





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