NGなきワル/バイオレンス長編作完全版!👉自らに過酷を課してのし上がったワルの非情とどうしようもない”ある焦がれ”…。
大打ノボル、最終選択点”殺人コーディネート”に到達す…!
悪の研鑽⑤


「いいかい、武次郎…。よくかみ砕いて聞いてほしいんだ。東京北部の埼玉県境は、東西両大手の傘下に取り込まれていない相和会のホームグランドだ。その相和会がだよ、今回の九州抗争手打ちで、東西間の焦点になってたんだよな。そこでは、ここまで脅威となった独立系組織の相和会対策を東西両者間で取り決めをして、足並みを揃える合意を交わしたはずだよ」

「…」

「…そしてだ、その場の主導役を務めたのが、東龍会の坂内会長だ。…先日会った折本さんもさ、はっきりとは口にしなかったが、東龍会は今後も星流会をかませて、相和会には牽制を強めるみたいなニュアンスだったわ」

武次郎は先程と打って変わり、眉間にしわを寄せた険しい表情で椎名の説明に聞き入っていた…。

「…その傘下、星流会こそ、坂内さんの描く我々ガキを取り込んだスキームを以前から一貫して持論として唱えてきた、言わば元祖なんだ。坂内さんは、オレたちとのパートナーシップは、それこそ星流会の実践過程をたたき台にする考えさ。まずは、この点を理解して欲しい」

椎名は正面に座ってる、自分より二回りは大きい武次郎の体に向かって、神妙な口ぶりで諭すようだった。

...


「ああ、わかってる。…だがよう、オレも正確なところを把握してる訳じゃあないが、実際は愚連隊まがいのやくざ予備軍を抱きこんでる程度じゃないのか、星流会は。オレからしたら、それって、ガキを2次組織化してる旧来の仕組みと変わんないと思うぜ」

「うん、今の実情はそんなとこだろう。でもな、星流会の諸星会長は旧来から組むガキはそんな準やくざではなく、より素人なガキってポリシーを持ち続けてきたそうだ。だからこそ、坂内さんは星流会スキームの構築に理解も示してるし、助力もな。でもな、諸星さんにそのガキ連中をすんなり取りこめないネックがあるんだ。あのエリアにはそんな事情が存在してるらしい…」

「なんなんだよ、それって?」

「コテコテのやくざである星流会にとってはお膝元でも、東京埼玉都県境のガキどもに手を突っ込めない障害…。それは、この地区の悪ガキ連中をいくつもの集団に分けて統括している、”ある人物”ってことになる」

「…椎名、誰なんだ、そいつは!」

「黒原盛弘って男だ。まあ、オレもつい最近知った名だ」

「…」

思わず武次郎も半身を前にどっと押し出し、テーブル越しでの椎名と顔はくっつく寸前だった…。




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