親が体験した怪奇譚/短編ホラー集ー家族愛編ー
暗い穴の中④
お父さんの報告を受けて、学校側は防空壕の前を立ち入りできないように閉鎖し、BとC子には当面自宅待機という対処をとったそうです。
「…だが、しばらくすると皆、口にしなくなった。おそらく、他にもあの穴に入ったことがある人間はいたと思うし、以前にもBやC子のような事例もあったんじゃないかと思うんだが、学校側もPTAも申し合わせたかのように静観していたのが、高校生の俺にとっては違和感があったし、ショックだった…」
父はもの悲しそうに、そう呟いていました。
「BとC子は自宅から抜け出して二人で会ったり、要するに離れられなくなっちゃったんだろう。二人はそのまま学校へ復帰することはなく半年たったある日、部の某OBが俺に”ある話”をしてくれたんだ。臨終間際のおじいさんから聞いた話として…」
戦時中まだ子供だった、そのおじいさんの話は、あの穴にまつわることでした。
なんと、戦時中あの防空壕に避難した人たち同士が、生き残って終戦後、結果的に結婚したケースがいくつかあったそうなのです。
...
「おそらく極限の精神状態で、狭く暗い空間に身を寄せ合い、気持ちがそういったところに及んじゃうものなのかも…。そのおじいさんが言うには、戦争末期はあの壕の中で男女が抱き合ったりしているとう噂まで出て、空襲になると、あそこには人が殺到したとね。人がこれ以上入れなくなると、後から入ろうとする人を、中のみんなが押し返しす…。弾き飛ばされた人は、そこで爆弾を落とされたりってこともあったそうだ」
おじいさんは子供心ながら、中に入ってて助かった人が生き残って戦争が終わったら、それがきっかけで結婚なんかしたら、ちょっとの差で穴に入れずに死んでいった人に恨まれる、絶対に別れなきゃ不幸になると思ったそうです。
そして後年、あの壕で結ばれた男女がみんな不審死したり、不幸な目に遭っていると、風の便りで耳にしたということなのです。
しかし、噂の範疇じゃあ、そんなことを大ぴらに訴えることはできないから、ずっと胸の内に閉まっていて、自分が死ぬ直前になって、家族にだけはあの時代をこの地域で生きた来た者として、それを伝える決心をされたらしいのです。
お父さんの報告を受けて、学校側は防空壕の前を立ち入りできないように閉鎖し、BとC子には当面自宅待機という対処をとったそうです。
「…だが、しばらくすると皆、口にしなくなった。おそらく、他にもあの穴に入ったことがある人間はいたと思うし、以前にもBやC子のような事例もあったんじゃないかと思うんだが、学校側もPTAも申し合わせたかのように静観していたのが、高校生の俺にとっては違和感があったし、ショックだった…」
父はもの悲しそうに、そう呟いていました。
「BとC子は自宅から抜け出して二人で会ったり、要するに離れられなくなっちゃったんだろう。二人はそのまま学校へ復帰することはなく半年たったある日、部の某OBが俺に”ある話”をしてくれたんだ。臨終間際のおじいさんから聞いた話として…」
戦時中まだ子供だった、そのおじいさんの話は、あの穴にまつわることでした。
なんと、戦時中あの防空壕に避難した人たち同士が、生き残って終戦後、結果的に結婚したケースがいくつかあったそうなのです。
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「おそらく極限の精神状態で、狭く暗い空間に身を寄せ合い、気持ちがそういったところに及んじゃうものなのかも…。そのおじいさんが言うには、戦争末期はあの壕の中で男女が抱き合ったりしているとう噂まで出て、空襲になると、あそこには人が殺到したとね。人がこれ以上入れなくなると、後から入ろうとする人を、中のみんなが押し返しす…。弾き飛ばされた人は、そこで爆弾を落とされたりってこともあったそうだ」
おじいさんは子供心ながら、中に入ってて助かった人が生き残って戦争が終わったら、それがきっかけで結婚なんかしたら、ちょっとの差で穴に入れずに死んでいった人に恨まれる、絶対に別れなきゃ不幸になると思ったそうです。
そして後年、あの壕で結ばれた男女がみんな不審死したり、不幸な目に遭っていると、風の便りで耳にしたということなのです。
しかし、噂の範疇じゃあ、そんなことを大ぴらに訴えることはできないから、ずっと胸の内に閉まっていて、自分が死ぬ直前になって、家族にだけはあの時代をこの地域で生きた来た者として、それを伝える決心をされたらしいのです。