親が体験した怪奇譚/短編ホラー集ー家族愛編ー
暗い穴の中⑤



「卓球部のOBは、BとC子があの穴に入ったことに俺が携わっていたことを知っていたから、あくまで身内の又聞き話として断りの上で、俺におじいさんの言葉を伝えてくれたんだよ」

「お父さん…」

私はこの時、無言であることを願っていました。
そして父は、私の言葉に出さない問いかけに応えてくれました。

「いろいろ考えたけど、OBから教えてもらった話はBとC子に伝えることにした」

「お父さん…!」

私はホッとした気持ちと感激で、体がジーンと痺れるの感じました。
”やっぱり私のお父さんは人に感謝され、尊敬される立派な人だ!”
私はこう心の中で叫んでいたのです。

しかし、父はまだ物悲しそうな表情のままでした…。


...


「最初はAとD子に相談した。でも、まともに話を聞こうともせず、拒絶されたよ。関わりたくないとね。それで、BとC子の家に行って、家族にあくまで又聞きの話だけどということで、できれば二人は別れさせた方がいいと伝えたんだ」

「そう…。よかった。お父さんの行動は立派よ。私、嬉しいわ」

「何が立派なもんか!」

私は驚きました。
父は大声を上げて、私の顔を見ながら、その言葉はまるで訴えかけるようでしたから…。

...


「明代…、その時な、お父さんは二人の親に、自分があの時卓球の相手をしていたことは伏せたんだ。しかも、直接本人たちと会うことも最初から避けてた。本音は関わり合いたくなかったんだよ。ただ自己満足で、良心からの行いを取りあえずやったと。アリバイ作りだったんだよ、所詮…」

私は呆然と、父の懺悔ともいうべき激白を、ただ黙って聞くしかありませんでした…。




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