親が体験した怪奇譚/短編ホラー集ー家族愛編ー
その4


「エイジ君、私にネタ明かしをしてくれたわ。彼、目力で催眠術の力が少しあるって言ってたわ。それで、あのいじめっ子と上級生はマインドコントロールで導いたって。私の持ってるカードは、ただのお守りに過ぎないということだったわ」

エイジ君は他の二人と会って、”お守り”の有効活用を図って欲しいと母に頼んだそうです。

「私は彼に尋ねたの。何で私にそんな頼みをするのかって。一人は6年生だったから。年が上だからその子に今の話をした方がいいんじゃないかと言ったんだけど。そしたら彼、私の作文に感動して、中里さんならって思ってくれたそうなんだけどね…」

エイジ君は年中転校して、本来は転校生である自分に向かうヒエラルキーターゲットが誰で、そこに巣食うお山の大将が誰なのかが瞬時に解析できたのかも知れません。

この転校生には付け入るスキなし‥、ならば、従来のターゲットでそのままという理論です。

エイジ君は小学生でありながら、大人社会顔負けの弱肉強食と自己保身によってもたらせる醜い子供社会のヒエラルキーの本質を掌握していた…、私にはそう感じ取れました。

以下は、母が当時エイジ君から告げられた彼の言葉です。


...


「僕が日本全国を転校して、いつも感じることは、学校に来るのが辛いって思ってる子がどこのクラスにも必ずいるっていうことなんだ。このままだと、死んじゃいたいと考える子や学校に来なくなるなって子も何となくわかるんだよ」

この時の彼の”言葉”は、とても同級生とは思えす、母は驚きというよりも、ある種の大きなショックを受けたようです。

「…本当は転校生がいじめの的になれば、自分はいじめの対象から外れるかもって心の中では思ってるかもしれない…」

エイジ君は転校する度、自分の能力と例のカードで何人かのいじめられっ子を救ってきたそうなんです。


...


「…今の20人が、みんなそのお守りで、いじめられてる子につなげていけば、勇気が湧いて自分を変えられる子も出てくると思うんだ。20人がもっと増えれば、その輪も増えるでしょ?」

その時のエイジ君の目は鋭かったけどキラキラしていて、最初の怖いイメージはなかったそうです。

「彼の言ってることは理解できたから、一応承諾はしたんだけど、まだ子供だったし、ちょっと冷めてたところもあったのよね…」

この時のお母さんの表情はどこか寂しげでした。



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