親が体験した怪奇譚/短編ホラー集ー家族愛編ー
その5


「彼が転校した後、彼がカードを渡したという同級生と一級上の二人と会って話をしたわ。でも二人とも、カードはずっと自分が持ってるって言い張ってね。私と違って、自分たちはいつもいじめの対象だったから、これからもこのお守りは離せないって…」

結局、母はそれ以上は説得しなかったそうです。
そして、母はお守りとしてのカードを渡すべきと判断するまでの相手には巡り合わず、中学に進学しました。


...


「例の2人は同じ中学だったわ。それで中学に上がって半年くらいして、一級上の子と学校で会った時、彼女はエイジ君からもらったこのカード、まだ効き目があるって言うのよ」

その子は他のクラスメートをいじめていた男子にカードで念じたそうなんですが、そしたらそのことを先生にとがめられて、いじめてた子に謝ったということです。

「一級上の子、そのうちいじめっ子の側に入ってね…。そのカードで念じることを逆手にとって、今度は弱い者に何かと強く出るようになっていったわ。でも私は彼女に何も言わず、見過ごしていた…」

ここで母は俯いてしまいました。

「…中2になってクラス替えがあると、女子のグループで明らかにいじめられてて孤立してる子がいてね。そこで、例のカードをその子に渡すことにしたの。彼女はわらにもすがるような気持だったのか、喜んで受け取ったわ。…ミチヨ、私、この時肩から荷を下ろしたような気持ちだったのよ」

お母さんは、エイジ君に託されたカードを重荷に感じていたようです。
それで、やっとそれから解放されたと…。

「ところが、2か月ほどすると、その子がカードを突っ返してきたの…」


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